家庭礼拝 2023年6月日28 サムエル記下 1:1-27 ダビデ、サウルの死を知る
起
今日から、サムエル記下に入ります。サムエル記上はサウルの生涯だとすれば、サムエル記下はダビデの生涯です。これがどうしてサムエル記という書物となっているかと言えば、この二人とも、サムエルが油を注いで王にした者達だからです。サムエルの生涯はわずかの間しか記録されていませんが、その残した出来事はイスラエルの歴史に大きな影響を及ぼしたのです。ちなみにダビデの後に王となるソロモンは、列王記という書物に属するようになります。ですからサムエル記は特別なのです。
今日の箇所はダビデがサウルの死を知った時のことです。その死を知らせてくれたのはイスラエルの軍から逃れてきた若者でアマレク人でした。ダビデは丁度この時アマレクを攻めて、打ち倒して帰ってきたところなのです。その敵のアマレク人がイスラエル軍にもいたというのが不思議ですが、そのようなこともあったのでしょう。イスラエルに住んでいるアマレク人もいたのです。
このアマレク人は、ダビデがサウルから攻撃されていることを知っていたはずですから、ダビデにサウルとヨナタンの死んだことを知らせれば褒美でももらえると思ったのです。この男はダビデにそのことを知らせると、ダビデは二人の死をどうして知ったのかと、問いただしました。するとこの男はその時の状況を詳しく語り、サウルが槍にもたれかかり、とどめを刺してくれ、死にきれないからと願ったというのです。それでとどめを刺しましたとその若者は答えたのです。そして、頭にかぶっていた王冠と腕に付けていた腕輪を取って、持ってきましたと、誇らしげに言ったのです。これで立派な褒美がもらえるに違いないと思ったのではないでしょうか。
この若者の言ったことは本当でしょうか。もしかすると本当かもしれませんが、私にはそのようには思えません。前の章ではサウルは剣の上にふし倒れて死んでしまったことを、従者が確認しているからです。そして自分もその剣の上にふし倒れて共に死んだのです。そのサウルが死にきれないで、とどめを刺してくれとこのアマレクの若者に頼んだとは思えないのです。しかも槍にもたれかかって、立っていたのか座っていたのかして、その若者に声をかけとどめを刺してくれと願っているのです。前の状況とは違いすぎます。ですから、私はこのアマレクの若者は、サウルと従者がすでに死んで倒れているところに出会って、その遺骸から、金目の兜と腕輪を取ったのだと思います。そして逃げ回っているうちにダビデのところに行って、自分がとどめを刺したと言えばサウルに追われていたダビデは喜んで大きな褒美をくれるに違いないと思ったのだと思います。
ところがダビデの反応はこのアマレクの若者が思っていたのとは全く違っていたのです。ダビデはその死の知らせを聞くと、衣を割き、サウルとヨナタンとイスラエルのことを思って泣き、夕暮れまで断食をしたのです。それは共にいた者もそうしたのですから、イスラエル人たちはみな同じ思いを持っていたのかもしれません。この様な心情をこのアマレクの異邦人はとても理解できないで、サウルのとどめを打ったと言えば喜んでくれると思っていたのです。
そしてダビデは、断食し、嘆き悲しんだ後で、その知らせをした若者にどこの出身かと聞きただすと、私は寄留のアマレク人の子ですと言いました。たぶんその言葉を聞いて、ダビデは激怒したのだと思います。サウルが異邦人で無割礼のアマレク人にとどめを刺されたというのがとても侮辱的に思ったのだと思います。イスラエル人なら、神が油を注がれた人を殺めるなどということをとても考えつかないからです。サウルの従卒もそのことをとても恐れて、出来なかったし、サウルの死を知らされた、ダビデ以外のイスラエル人たちもダビデと共に衣を割いて、弔意を表したのです。得意になっているのは、このアマレク人だけだったのです。そこで、ダビデは「主が油を注がれた方を、おそれもせず手にかけ、殺害するとは何事か」と言って、その若者を殺させたのです。最初この話を読んだ時には、どうしてダビデはせっかく重要な知らせを教えに来てくれた人を殺すようなことをしたのだろうと思いました。でも、この個所を何度も読んでいるうちに、それが当然かもしれないと思うようになってきました。ダビデは最初この若者がイスラエル人だと思っていたのです。ですから、自分がサウルに頼まれてとどめを刺したと言ってもすぐには、そんなことをする者は殺してしまえとは言わなかったのです。ですが、従者と共にその死を悼み泣き断食し、少し落ち着いてから、その若者に出身はどこかと聞いて、アマレク人だと知った時、だから恐れもしないでとどめを刺したのかと思ったのです。イスラエル人ならしないだろうと思ったのです。というのもダビデはその直前にアマレク人を撃って帰って来たばかりなのです。ですから、この知らせてくれた若者を、神をも恐れぬ罪を犯すものだと言って、殺させたのです。ダビデにとって、神に油を注がれた人というのは特別な人なのです。その人に手を出すことなどできないのです。どんなに攻められても、その人に危害を加えることはできなかったのです。そしてダビデはサウルとヨナタンを悼む哀悼の歌を詠んで、ユダの人々に教えるようにと言い残したのです。サウルとヨナタンとイスラエルの勇者をたたえるためです。
承
それでは、聖書をもう一度読んでみましょう。1節から4節です。
サム下 1:1 サウルが死んだ後のことである。ダビデはアマレク人を討ってツィクラグに帰り、二日過ごした。
サム下 1:2 三日目に、サウルの陣営から一人の男がたどりついた。衣服は裂け、頭に土をかぶっていた。男はダビデの前に出ると、地にひれ伏して礼をした。
サム下 1:3 ダビデは尋ねた。「どこから来たのだ。」「イスラエルの陣営から逃れて参りました」と彼は答えた。
サム下 1:4 「状況はどうか。話してくれ」とダビデは彼に言った。彼は言った。「兵士は戦場から逃げ去り、多くの兵士が倒れて死にました。サウル王と王子のヨナタンも亡くなられました。」
この様に、サウルが死んだ時ダビデはアマレク人を襲撃して、帰って来たばかりで、まだ二日しかたっていませんでした。ダビデはこのペリシテの攻撃陣に加わって、イスラエルを攻める予定だったのですが、ペリシテの武将たちに帰れと言われて、一度家に戻り、アマレク攻撃に出ていたのです。ですから、ダビデはサウルの死には何ら責任はないということをここで証明しているのです。でももしそのペリシテの陣営に加わっていたならどうなるのでしょうか。でもそこには神様のご計画があったのです。ダビデはその罪を犯さないように守られたのです。それにしてもダビデはそのペリシテとの戦争のことは気になっていました。そのような時にサウルの陣営から一人の男がたどり着いたので、状況はどうか話してくれと彼に言ったのです。するとその男の言うのには、兵士は戦場から逃げ去り、多くの兵士が倒れて死に、サウル王と、王子のヨナタンもなくなられましたと報告したのです。
ダビデはもっと詳しく状況を知りたかったのでさらに尋ねました。5節から12節です。
サム下 1:5 ダビデは知らせをもたらしたこの若者に尋ねた。「二人の死をどうして知ったのか。」
サム下 1:6 この若者は答えた。「わたしはたまたまギルボア山におりました。そのとき、サウル王は槍にもたれかかっておられましたが、戦車と騎兵が王に迫っていました。
サム下 1:7 王は振り返ってわたしを御覧になり、お呼びになりました。『はい』とお答えすると、
サム下 1:8 『お前は何者だ』とお尋ねになり、『アマレクの者です』とお答えすると、
サム下 1:9 『そばに来て、とどめを刺してくれ。痙攣が起こったが死にきれない』と言われました。
サム下 1:10 そこでおそばに行って、とどめを刺しました。倒れてしまわれ、もはや生き延びることはできまいと思ったからです。頭にかぶっておられた王冠と腕につけておられた腕輪を取って、御主人様に持って参りました。これでございます。」
サム下 1:11 ダビデは自分の衣をつかんで引き裂いた。共にいた者は皆それに倣った。
サム下 1:12 彼らは、剣に倒れたサウルとその子ヨナタン、そして主の民とイスラエルの家を悼んで泣き、夕暮れまで断食した。
この様にここに書かれていることは、最初に、この話の概要のところで語った通りです。このアマレクの若者は、ダビデに気に入られようとして、余計なことまで言ってしまったのです。それがなければ、本当に褒美をもらえたかもしれませんでした。この若者は、王にとどめを刺したことを詳しく事情を含めて語りました。それは自分の手柄を語るように語ったのですが、ダビデ達の反応は、自分の衣をつかんで引き裂き、サウルとヨナタンそして主の民とイスラエルのために悼んで泣き、そして断食をしたのです。ダビデ達の悲しみは本当に大きかったのです。サウルがダビデ達を迫害したことを忘れたかのように、その死を悼んだのです。それほどダビデにとって、神が油を注がれた人というのは大切な人だったのです。
この様に断食をして、その死を悼んだ後、ダビデは少し落ち着いて、知らせをしてくれたアマレクの男に尋ねました。13節から16節です。
サム下 1:13 ダビデは、知らせをもたらした若者に尋ねた。「お前はどこの出身か。」「わたしは寄留のアマレク人の子です」と彼は答えた。
サム下 1:14 ダビデは彼に言った。「主が油を注がれた方を、恐れもせず手にかけ、殺害するとは何事か。」
サム下 1:15 ダビデは従者の一人を呼び、「近寄って、この者を討て」と命じた。従者は彼を打ち殺した。
サム下 1:16 ダビデは言った。「お前の流した血はお前の頭に返る。お前自身の口が、『わたしは主が油を注がれた方を殺した』と証言したのだから。」
この様に、ダビデはその若者に、お前はどこの出身かと尋ねると私は寄留のアマレク人の子ですと言いました。アマレク人はイスラエルの南側のエジプト側に住んでいる人々ですが、中にはイスラエルに寄留して、その家族を持っているものもいました。この若者はその寄留したアマレク人の子供であったのですが、イスラエルに住んでいたのでイスラエルの兵士となっていたのです。ダビデはこの男がアマレク人だと聞いてかっとなって殺すように言ったのか、断食しているときに油注がれた方にとどめを刺したこの男をどうしたらよいか神様に尋ねたのかもしれません。もしかするとこの男が殺したのではないかもしれませんが、自分で殺したと言っていたので、ダビデは、「主が油を注がれた方を、恐れもせず手にかけ、殺害するとは何事か。」と言って、その罪を罰し殺したのです。ダビデには誰かに復讐せざるを得ないような気持ちが働いていたのかもしれません。この様に、せっかくダビデに良い知らせをもたらした男は哀れにも殺されてしまうことになるのです。この男は、殺したなどと言わずに、サウル王は死んでいました。これがその証拠ですと言えば、それだけでも褒美をもらえたのです。
転
そのあと、ダビデはサウルとその子ヨナタンを悼む歌を詠みました。弓という題名でした。それはサウルとヨナタンを悼むだけでなくイスラエルとその勇士たちをも悼む歌でした。そしてその歌をみんなに、教えて、一緒にイスラエルを悼むようにさせたのです。ダビデのイスラエルを思う思いはこのようだったのです。サウルに対しては決して恨みに思うことはなかったのです。この題名となった弓とはヨナタンの弓です。この弓はダビデに危険を知らせてくれた弓でもあります。21節と22節にはこう書かれています。
サム下 1:21 ギルボアの山々よ、いけにえを求めた野よ/お前たちの上には露も結ぶな、雨も降るな。勇士らの盾がそこに見捨てられ/サウルの盾が油も塗られずに見捨てられている。
サム下 1:22 刺し殺した者たちの血/勇士らの脂をなめずには/ヨナタンの弓は決して退かず/サウルの剣がむなしく納められることもなかった。
ここにはサウルとヨナタンと勇士たちを殺したペリシテ人たちに復讐しないではおかないということをヨナタンの弓は決して退かず、サウルの剣がむなしく収められることもなかったという言葉で表されています。この様にして、ダビデはペリシテに対する復讐の思いを公にし、人々の心をつかんでいくのです。
結
ダビデは、サウルとヨナタンの死の知らせを聞いて、服を割き、嘆き悲しみ、断食してその死を悼みました。ですがその死の知らせを知らせてくれたアマレクの若者に対しては、油注がれた方に手をかけた罪として、殺してしまいました。この若者は自分の手柄にしようとして、自分が殺したと言った言葉によって、自分が殺されてしまったのです。何と不思議な事でありましょうか。すべてはその背後に神様のご計画があったのです。
(一分間黙想)(お祈り)
天の父なる神様。ダビデはサウルの死を聞いて嘆き悲しみました。自分を殺そうとしたものに対して、これほどその死を悼んだのです。一方その死を知らせたものには、死が与えられました。神が油を注がれた人を恐れもなく殺してしまった罪のためです。褒められると思ってしたことが、逆に災いとなってしまいました。天の父よ、あなたのなさることは人の思いでは測り知ることが出来ません。ただあなたを信頼し、ゆだねて歩むことが出来ますように。
この祈りを、主イエス・キリストの御名によって、お祈りいたします。アーメン
<<聖書の箇所(旧約聖書:◇サムエル記下)>>
◆ダビデ、サウルの死を知る
サム下 1:1 サウルが死んだ後のことである。ダビデはアマレク人を討ってツィクラグに帰り、二日過ごした。
サム下 1:2 三日目に、サウルの陣営から一人の男がたどりついた。衣服は裂け、頭に土をかぶっていた。男はダビデの前に出ると、地にひれ伏して礼をした。
サム下 1:3 ダビデは尋ねた。「どこから来たのだ。」「イスラエルの陣営から逃れて参りました」と彼は答えた。
サム下 1:4 「状況はどうか。話してくれ」とダビデは彼に言った。彼は言った。「兵士は戦場から逃げ去り、多くの兵士が倒れて死にました。サウル王と王子のヨナタンも亡くなられました。」
サム下 1:5 ダビデは知らせをもたらしたこの若者に尋ねた。「二人の死をどうして知ったのか。」
サム下 1:6 この若者は答えた。「わたしはたまたまギルボア山におりました。そのとき、サウル王は槍にもたれかかっておられましたが、戦車と騎兵が王に迫っていました。
サム下 1:7 王は振り返ってわたしを御覧になり、お呼びになりました。『はい』とお答えすると、
サム下 1:8 『お前は何者だ』とお尋ねになり、『アマレクの者です』とお答えすると、
サム下 1:9 『そばに来て、とどめを刺してくれ。痙攣が起こったが死にきれない』と言われました。
サム下 1:10 そこでおそばに行って、とどめを刺しました。倒れてしまわれ、もはや生き延びることはできまいと思ったからです。頭にかぶっておられた王冠と腕につけておられた腕輪を取って、御主人様に持って参りました。これでございます。」
サム下 1:11 ダビデは自分の衣をつかんで引き裂いた。共にいた者は皆それに倣った。
サム下 1:12 彼らは、剣に倒れたサウルとその子ヨナタン、そして主の民とイスラエルの家を悼んで泣き、夕暮れまで断食した。
サム下 1:13 ダビデは、知らせをもたらした若者に尋ねた。「お前はどこの出身か。」「わたしは寄留のアマレク人の子です」と彼は答えた。
サム下 1:14 ダビデは彼に言った。「主が油を注がれた方を、恐れもせず手にかけ、殺害するとは何事か。」
サム下 1:15 ダビデは従者の一人を呼び、「近寄って、この者を討て」と命じた。従者は彼を打ち殺した。
サム下 1:16 ダビデは言った。「お前の流した血はお前の頭に返る。お前自身の口が、『わたしは主が油を注がれた方を殺した』と証言したのだから。」
◆哀悼の歌「弓」
サム下 1:17 ダビデはサウルとその子ヨナタンを悼む歌を詠み、
サム下 1:18 「弓」と題して、ユダの人々に教えるように命じた。この詩は『ヤシャルの書』に収められている。
サム下 1:19 イスラエルよ、「麗しき者」は/お前の高い丘の上で刺し殺された。ああ、勇士らは倒れた。
サム下 1:20 ガトに告げるな/アシュケロンの街々にこれを知らせるな/ペリシテの娘らが喜び祝い/割礼なき者の娘らが喜び勇むことのないように。
サム下 1:21 ギルボアの山々よ、いけにえを求めた野よ/お前たちの上には露も結ぶな、雨も降るな。勇士らの盾がそこに見捨てられ/サウルの盾が油も塗られずに見捨てられている。
サム下 1:22 刺し殺した者たちの血/勇士らの脂をなめずには/ヨナタンの弓は決して退かず/サウルの剣がむなしく納められることもなかった。
サム下 1:23 サウルとヨナタン、愛され喜ばれた二人/鷲よりも速く、獅子よりも雄々しかった。命ある時も死に臨んでも/二人が離れることはなかった。
サム下 1:24 泣け、イスラエルの娘らよ、サウルのために。紅の衣をお前たちに着せ/お前たちの衣の上に/金の飾りをおいたサウルのために。
サム下 1:25 ああ、勇士らは戦いのさなかに倒れた。ヨナタンはイスラエルの高い丘で刺し殺された。
サム下 1:26 あなたを思ってわたしは悲しむ/兄弟ヨナタンよ、まことの喜び/女の愛にまさる驚くべきあなたの愛を。
サム下 1:27 ああ、勇士らは倒れた。戦いの器は失われた。