家庭礼拝 2021年1月6日 創世記 44:1-34 銀の杯
起
今日の聖書の個所もヨセフ物語の長い個所です。ヨセフは弟ベニヤミンとも会うことが出来、兄弟たちと会食もしましたが、自分が兄弟のヨセフであることはまだ兄弟たちに言ってはいません。陰で涙を流すような場面もあったのですが、どうしてヨセフは自分の正体を明かそうとはしないのでしょうか。それは、エジプトの宰相にまで上り詰めたヨセフとカナンの田舎から出てきた兄弟たちとの圧倒的な力の差がそうさせたのではないかと思います。もしヨセフが自分が兄弟のヨセフであることを告げたならば、まず兄弟は自分たちが殺そうとしたヨセフが今ここに絶大な力を持って対面していると知っただけで、自分たちは復讐のために殺されてしまうと恐れるでしょう。たとえそうでなくても、ヨセフがどんなことを訪ねたとしても、兄弟たちはヨセフの気に入るような答えしか返してこないでしょう。すなわちヨセフには兄弟たちの本心を知ることが出来なくなるのです。ヨセフの心配は、兄弟たちが、弟のベニヤミンを本当に大切にしてくれているかどうか、親ヤコブを困らせるようなことはしていないかどうかということです。
ヨセフが親元にいた時の兄弟たちはバラバラで親のヤコブの言うことも聞かなくなっていたのです。ヤコブの子供は12人いますが、二人の正妻と二人の側女に産ませた、異母兄弟たちなのです。その中でもヤコブが一番正当な後継者としてかわいがっていた、ラケルの子供はヨセフとベニヤミンの二人しかいなくて、一番の少数派なのです。一番力を持っていたのはレアの息子たちで6人もいたし、年も上だったので兄弟たちはみんな彼らの言うことに従ったのです。特に長男のルベンが最初の指導者となり、そのあとは次男のシメオンと3男のレビが、父親ヤコブの思いに逆らって、シケムの一族を皆殺しにしたりしました。その後は今、ユダが力をつけて兄弟たちの指導者になっているのです。そのような兄弟たちの力関係の中で、ヨセフは嫌われて、殺されそうになったり、売り飛ばされそうになったのです。ヨセフが売られてしまうきっかけになったのは、ヨセフが穴に落とされていた時、力をつけ始めたユダの次の言葉でした。それは「殺しても得にはならない、むしろ、イシュマエル人に売ろう。ともかくあれだって肉親の兄弟なのだから。」と分かったような振りをして、ヨセフに対しては本当の愛情のかけらも見せない冷酷で計算高いユダがそこにいたのです。このように、兄弟たちの中でも勢力争いのようなことがあったので、一人だけの弟、ベニヤミンはきっと自分と同じように危険な目にあわされているのではないかと心配したのです。
ヨセフがこの物語の中で、兄弟に対して厳しく当たり、いろいろな試練を与えるのは兄弟たちの思いが一体どうなのか、本当に父親を大切に思っているのか、弟のベニヤミンを大切にしてくれるのか。兄弟が力を合わせて暮らしているのかということを知りたかったのです。そのためには、自分がエジプトの宰相であることを言わないほうが本当のことが知れると思ったのです。そして今日の話はヨセフが仕組んだ兄弟への試練の中で、兄弟たちがどのような態度をとるのかを見ることによって、その本心を知ろうとしたことなのです。
それではヨセフがどのような試練を兄弟に与えて、何を知ろうとしたのかを聖書から聞いてみましょう。
承
ヨセフは兄たちと会見し、弟のベニヤミンとも会うことが出来て、一緒に会食し、楽しい時を過ごしたのです。そして、自分の正体は明かすことなく、兄弟たちを故郷に返すことになりました。ですがヨセフは一つの計画を考えていました。そして、1節から3節です。
創
44:1 ヨセフは執事に命じた。「あの人たちの袋を、運べるかぎり多くの食糧でいっぱいにし、めいめいの銀をそれぞれの袋の口のところへ入れておけ。
創
44:2 それから、わたしの杯、あの銀の杯を、いちばん年下の者の袋の口に、穀物の代金の銀と一緒に入れておきなさい。」執事はヨセフが命じたとおりにした。
創
44:3 次の朝、辺りが明るくなったころ、一行は見送りを受け、ろばと共に出発した。
ヨセフは執事に三つのことを命じました。一つは、袋にいっぱいの食料を詰め込むこと、二つ目は、めいめいの銀をそれぞれの袋の口のところに入れておくこと、これは前回と同じように、代金はとらないと言うことです。三つめは一番年下のベニヤミンの袋に、ヨセフの銀の杯を入れておけと命じたのです。最初の二つのことは前回と同じですが、三つ目のことはこれは何を意味するのでしょうか。また、兄弟たちを試すためにするのでしょうか。
次の日の朝にいよいよ兄弟たちが出発することになりました。3節から9節です。
創
44:3 次の朝、辺りが明るくなったころ、一行は見送りを受け、ろばと共に出発した。
創
44:4 ところが、町を出て、まだ遠くへ行かないうちに、ヨセフは執事に命じた。「すぐに、あの人たちを追いかけ、追いついたら彼らに言いなさい。『どうして、お前たちは悪をもって善に報いるのだ。
創
44:5 あの銀の杯は、わたしの主人が飲むときや占いのときに、お使いになるものではないか。よくもこんな悪いことができたものだ。』」
創
44:6 執事は彼らに追いつくと、そのとおりに言った。
創
44:7 すると、彼らは言った。「御主人様、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか。僕どもがそんなことをするなどとは、とんでもないことです。
創
44:8 袋の口で見つけた銀でさえ、わたしどもはカナンの地から持ち帰って、御主人様にお返ししたではありませんか。そのわたしどもがどうして、あなたの御主君のお屋敷から銀や金を盗んだりするでしょうか。
創
44:9 僕どもの中のだれからでも杯が見つかれば、その者は死罪に、ほかのわたしどもも皆、御主人様の奴隷になります。」
また事件が起こりました。兄弟たちが、町を出てまだ遠くへ行かないうちに、ヨセフに命じられた執事たちが、追い駆けてきたのです。そしてこう言いました。『どうして、お前たちは悪をもって善に報いるのだ。あの銀の杯は、わたしの主人が飲むときや占いのときに、お使いになるものではないか。よくもこんな悪いことができたものだ。』これは実はヨセフが執事にこう言いなさいと命じて言わせたことでした。すると兄弟たちはどうしてそんなことをするでしょうか、前回の銀も持ち帰ってお返ししたくらいなのに、盗むはずがないではないですかと反論するのです。そして、その杯が、誰かの袋に入っているのが見つかったら、その者が死罪に、ほかの私どもは皆、奴隷になりますと言ったのです。絶対にそんなことをする者はいないと信じていたからです。ですが、なぜヨセフは、執事に命じて、このような試練を兄弟たちに与えたのでしょうか。決して復讐ではないのです。
そして、執事はそれぞれの袋の中身を調べ始めたのです。10節から13節です。
創
44:10 すると、執事は言った。「今度もお前たちが言うとおりならよいが。だれであっても、杯が見つかれば、その者はわたしの奴隷にならねばならない。ほかの者には罪は無い。」
創
44:11 彼らは急いで自分の袋を地面に降ろし、めいめいで袋を開けた。
創
44:12 執事が年上の者から念入りに調べ始め、いちばん最後に年下の者になったとき、ベニヤミンの袋の中から杯が見つかった。
創
44:13 彼らは衣を引き裂き、めいめい自分のろばに荷を積むと、町へ引き返した。
この執事は、自分がヨセフに命じられて兄弟たちを騙しているようなものですから、この兄弟たちの必死の訴えの、もし本当なら死刑になっても全員奴隷になっても良いと言う声に圧倒されて、こう言いました。「今度もお前たちが言うとおりならよいが。だれであっても、杯が見つかれば、その者はわたしの奴隷にならねばならない。ほかの者には罪は無い。」このように、杯の入っていたものだけが、奴隷になって、ほかの者には罪はないと言ったのです。この執事は当然ベニヤミンから銀の杯が出てくるのを知っているのです。そして、年上の者の袋から調べていくと、一番最後のベニヤミンの袋の中から杯が見つかったのです。兄弟たちはその驚きと絶望のために衣を引き裂き、おとなしく従って、町に引き返したのです。この時の兄弟たちの驚きと苦しみはどれほどだったでしょうか。
ヨセフはどうして、ベニヤミンの袋に銀の杯を入れたのでしょうか。この試みと、シメオンが人質になった時の試みとでは何が違うのでしょうか。多分ヨセフは、レアの息子たちの兄弟である、シメオンが牢に入れられた時、果たしてほかの兄弟たちが力を合わせて助けに来てくれるだろうかというのが最初の試みで、今回の試みは、ラケルのただ一人残った息子のベニヤミンすなわち異母兄弟の窮地のために、ほかの兄弟たちは必死に助けようとするだろうか、というのが今回の試みの意味なのだと思います。そして今回はそのベニヤミンの窮地をどのように打開していくかということが兄弟たちに課せられた試みだったのです。
兄弟たちがヨセフの家に戻るとヨセフはまだそこにいて、兄弟たちを非難するのです。14節から17節です。
創
44:14 ユダと兄弟たちがヨセフの屋敷に入って行くと、ヨセフはまだそこにいた。一同は彼の前で地にひれ伏した。
創
44:15 「お前たちのしたこの仕業は何事か。わたしのような者は占い当てることを知らないのか」とヨセフが言うと、
創
44:16 ユダが答えた。「御主君に何と申し開きできましょう。今更どう言えば、わたしどもの身の証しを立てることができましょう。神が僕どもの罪を暴かれたのです。この上は、わたしどもも、杯が見つかった者と共に、御主君の奴隷になります。」
創
44:17 ヨセフは言った。「そんなことは全く考えていない。ただ、杯を見つけられた者だけが、わたしの奴隷になればよい。ほかのお前たちは皆、安心して父親のもとへ帰るがよい。」
ヨセフの前に連れてこられて、ヨセフが兄弟たちに、お前たちのしたこの仕業は何事かとしかりつけると、ここでもユダが兄弟を代表してこう答えるのです。それは、杯が見つかったからにはもう言い訳はしない。杯が見つかったベニヤミンだけでなく、私たち全員が、連帯責任で、奴隷になりますと言ったのです。ベニヤミンだけを奴隷にさせておくことはしないと、自分たちもその罪を負うと言うのです。その時ユダは、こういうのです、神が僕どもの罪を暴かれたのです、こう言ったのです。ユダと兄弟たちは、この杯の話には納得できなくても、このような形でエジプトで奴隷になってしまうと言うのは、ヨセフがエジプトに売られて奴隷になってしまったことの報いを受けているのだと言う、受け止め方なのです。それは神様が、私たちの罪を暴いて、ヨセフと同じ奴隷にすると言う裁きを与えたのだと受け止めているのです。それほど兄弟たちの心には、ヨセフがエジプトに売られてしまったことを、後悔の念として残っていたのです。
この様にユダは兄弟全員が奴隷になりますと言っても、ヨセフはそんなことは全く考えていない、ほかの者たちは安心して父親のもとに帰りなさいと言うのです。ヨセフは、まだ兄弟たちを信じていなくて、このままベニヤミンを兄弟たちの中に置いておいたら、自分と同じような悲惨なことになるのではないかと恐れて、その兄弟たちの中から引き離そうと思ったのではないかと思います。
転
そこでユダが兄弟を代表して、ヨセフにベニヤミンだけは助けてほしいと言うことを切々と語るのです。そしてどうしてこうなったのか、父親がこのことをどのように思うのかを詳しく語って、憐みを求めるのです。ユダはこのことのいきさつを、父ヤコブに話したことや、ヤコブがどのように言ったのかなどを詳しく語り、もしベニヤミンが帰らなかったならば、父親は死んでしまうだろう。そのことを私たちは見るに忍びないのだと語るのです。
そして最後にこう言うのです。30節から34節です。
創 44:30 今わたしが、この子を一緒に連れずに、あなたさまの僕である父のところへ帰れば、父の魂はこの子の魂と堅く結ばれていますから、
創 44:31 この子がいないことを知って、父は死んでしまうでしょう。そして、僕どもは白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのです。
創 44:32 実は、この僕が父にこの子の安全を保障して、『もしも、この子をあなたのもとに連れて帰らないようなことがあれば、わたしが父に対して生涯その罪を負い続けます』と言ったのです。
創 44:33 何とぞ、この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。
創 44:34 この子を一緒に連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰ることができましょう。父に襲いかかる苦悶を見るに忍びません。」
ユダはこう言って、自分を犠牲にしてでも、ベニヤミンを帰らせてくれと懇願するのです。この兄弟たちはすっかり変わっていたのです。以前は、ヤコブがかわいがるラケルの息子ヨセフやベニヤミンを妬んでいて、隙あらば殺そうと思っていたのですが、実際にヨセフがいなくなった後の父ヤコブの悲嘆を見て、自分たちの罪を思い知らされたのです。そして自分たちの罪を悔い改めただけではなく、父ヤコブのためならば、命に代えて、父の思いを遂げてあげたいと言う思いになっていたのです。バラバラだった、兄弟たちは父への思いで一つになっていたのです。これは私たち信仰者が、それぞれはバラバラでも神様への思いでは一つになれるし、イエス様の弟子たちも本当はいろいろな考えの人たちでバラバラなのですが、イエス様を愛する思いで一つになっていたのと同じなのです。ユダは、必死の思いで、ヤコブに、「何とぞ、この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。この子を一緒に連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰ることができましょう。父に襲いかかる苦悶を見るに忍びません。」と訴えたのです。ヤコブが知りたかったのはこのことだったのです。本当に、兄弟たちが力を合わせて、ベニヤミンや父ヤコブを大切にすることが出来るのかどうかそれを知りたかったのです。このユダの言葉を聞いて、ヤコブも心から心を揺さぶられるのです。
結
ヤコブは兄弟たちに計略を企んで、兄弟たちの本心を探ろうとしました。その結果は、兄弟たちが、自分の命を捧げても父の思いを遂げてやり、ベニヤミンを助け出したいと言う思いを聞き出すことが出来ました。それは、兄弟たちが、自分たちの罪を悔い改め、もう二度と父ヤコブを悲しませることはすまいという、強い覚悟を持ったからなのです。父の愛が子供たちの罪を悔い改めさせたのです。
(一分間黙想)(お祈り)
天の父なる神様、ヤコブは兄たちの本心を知るために計略をもって、試みましたが、そこからは兄たちの純粋な思いを聞き出すことが出来ました。もう、かつてのヨセフを恨んで、殺してしまおうと思っていた兄弟ではありませんでした。父への愛が息子たちの思いを変えたのです。私たちもまた、父なる神様への愛と、イエス・キリストへの愛によって、一つにされているものです。自分たちはバラバラでも神様のもとで愛のもとで一つにされるものです。どうかあなたのために生きるものとさせてください。自分たちの欲望のままに生きるのではなく、あなたに喜ばれるものとなりますように。この祈りを、主イエス・キリストの御名によってお祈りいたします。アーメン
<<聖書の箇所(旧約聖書:◇創世記)>>
◆銀の杯
創
44:1 ヨセフは執事に命じた。「あの人たちの袋を、運べるかぎり多くの食糧でいっぱいにし、めいめいの銀をそれぞれの袋の口のところへ入れておけ。
創
44:2 それから、わたしの杯、あの銀の杯を、いちばん年下の者の袋の口に、穀物の代金の銀と一緒に入れておきなさい。」執事はヨセフが命じたとおりにした。
創
44:3 次の朝、辺りが明るくなったころ、一行は見送りを受け、ろばと共に出発した。
創
44:4 ところが、町を出て、まだ遠くへ行かないうちに、ヨセフは執事に命じた。「すぐに、あの人たちを追いかけ、追いついたら彼らに言いなさい。『どうして、お前たちは悪をもって善に報いるのだ。
創
44:5 あの銀の杯は、わたしの主人が飲むときや占いのときに、お使いになるものではないか。よくもこんな悪いことができたものだ。』」
創
44:6 執事は彼らに追いつくと、そのとおりに言った。
創
44:7 すると、彼らは言った。「御主人様、どうしてそのようなことをおっしゃるのですか。僕どもがそんなことをするなどとは、とんでもないことです。
創
44:8 袋の口で見つけた銀でさえ、わたしどもはカナンの地から持ち帰って、御主人様にお返ししたではありませんか。そのわたしどもがどうして、あなたの御主君のお屋敷から銀や金を盗んだりするでしょうか。
創
44:9 僕どもの中のだれからでも杯が見つかれば、その者は死罪に、ほかのわたしどもも皆、御主人様の奴隷になります。」
創
44:10 すると、執事は言った。「今度もお前たちが言うとおりならよいが。だれであっても、杯が見つかれば、その者はわたしの奴隷にならねばならない。ほかの者には罪は無い。」
創
44:11 彼らは急いで自分の袋を地面に降ろし、めいめいで袋を開けた。
創
44:12 執事が年上の者から念入りに調べ始め、いちばん最後に年下の者になったとき、ベニヤミンの袋の中から杯が見つかった。
創
44:13 彼らは衣を引き裂き、めいめい自分のろばに荷を積むと、町へ引き返した。
創
44:14 ユダと兄弟たちがヨセフの屋敷に入って行くと、ヨセフはまだそこにいた。一同は彼の前で地にひれ伏した。
創
44:15 「お前たちのしたこの仕業は何事か。わたしのような者は占い当てることを知らないのか」とヨセフが言うと、
創
44:16 ユダが答えた。「御主君に何と申し開きできましょう。今更どう言えば、わたしどもの身の証しを立てることができましょう。神が僕どもの罪を暴かれたのです。この上は、わたしどもも、杯が見つかった者と共に、御主君の奴隷になります。」
創
44:17 ヨセフは言った。「そんなことは全く考えていない。ただ、杯を見つけられた者だけが、わたしの奴隷になればよい。ほかのお前たちは皆、安心して父親のもとへ帰るがよい。」
◆ユダの嘆願
創
44:18 ユダはヨセフの前に進み出て言った。「ああ、御主君様。何とぞお怒りにならず、僕の申し上げますことに耳を傾けてください。あなたはファラオに等しいお方でいらっしゃいますから。
創
44:19 御主君は僕どもに向かって、『父や兄弟がいるのか』とお尋ねになりましたが、
創
44:20 そのとき、御主君に、『年とった父と、それに父の年寄り子である末の弟がおります。その兄は亡くなり、同じ母の子で残っているのはその子だけですから、父は彼をかわいがっております』と申し上げました。
創
44:21 すると、あなたさまは、『その子をここへ連れて来い。自分の目で確かめることにする』と僕どもにお命じになりました。
創
44:22 わたしどもは、御主君に、『あの子は、父親のもとから離れるわけにはまいりません。あの子が父親のもとを離れれば、父は死んでしまいます』と申しましたが、
創
44:23 あなたさまは、『その末の弟が一緒に来なければ、再びわたしの顔を見ることは許さぬ』と僕どもにおっしゃいました。
創
44:24 わたしどもは、あなたさまの僕である父のところへ帰り、御主君のお言葉を伝えました。
創
44:25 そして父が、『もう一度行って、我々の食糧を少し買って来い』と申しました折にも、
創
44:26 『行くことはできません。もし、末の弟が一緒なら、行って参ります。末の弟が一緒でないかぎり、あの方の顔を見ることはできないのです』と答えました。
創
44:27 すると、あなたさまの僕である父は、『お前たちも知っているように、わたしの妻は二人の息子を産んだ。
創
44:28 ところが、そのうちの一人はわたしのところから出て行ったきりだ。きっとかみ裂かれてしまったと思うが、それ以来、会っていない。
創
44:29 それなのに、お前たちはこの子までも、わたしから取り上げようとする。もしも、何か不幸なことがこの子の身に起こりでもしたら、お前たちはこの白髪の父を、苦しめて陰府に下らせることになるのだ』と申しました。
創
44:30 今わたしが、この子を一緒に連れずに、あなたさまの僕である父のところへ帰れば、父の魂はこの子の魂と堅く結ばれていますから、
創
44:31 この子がいないことを知って、父は死んでしまうでしょう。そして、僕どもは白髪の父を、悲嘆のうちに陰府に下らせることになるのです。
創
44:32 実は、この僕が父にこの子の安全を保障して、『もしも、この子をあなたのもとに連れて帰らないようなことがあれば、わたしが父に対して生涯その罪を負い続けます』と言ったのです。
創
44:33 何とぞ、この子の代わりに、この僕を御主君の奴隷としてここに残し、この子はほかの兄弟たちと一緒に帰らせてください。
創
44:34 この子を一緒に連れずに、どうしてわたしは父のもとへ帰ることができましょう。父に襲いかかる苦悶を見るに忍びません。」