家庭礼拝 2014年9月24日マタイ2章1-15占星術の学者たちが訪れる

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 前回もお話ししましたが、イエス・キリストの誕生を語っているのはルカ福音書とマタイ福音書のみです。マルコ福音書とヨハネ福音書はバプテスマのヨハネの宣教をもって始まります。すなわち、公的生涯しか語っていないのです。ですから、イエス様の誕生の事には何も触れていないのです。一方ルカ福音書には処女降誕をはじめいろいろなことがイエスの誕生にちなんで語られており、それがクリスマス物語のベースになっています。

 ところで、マタイ福音書は、イエスキリストの降誕の事はそれほど多くは語っていないのですが、東方の博士がやって来たことと、エジプトに逃げたことは詳しく書いてあるのです。イエス様の降誕の事よりも多く書いております。これはルカ福音書にも書いていないことなのです。マタイによる福音書のみに書いてあることです。私たちはクリスマス物語で、羊飼いたちが星の光を見ていると天使が現れ、救い主の誕生を告げられてベツレヘムにその子を拝みに行った後、東宝の3人の博士たちがやって来て、黄金、乳香、没薬をささげたと言う話を一つの物語として聞いているので、一連の事かと思っています。ところが、羊飼いの話はルカだけであり、不思議な星は現れていないのです。天使だけです。そして東方の博士たちがやって来るのはマタイだけです。この博士たちは占星学者なので、不思議な星を見てきたのです。しかも3人と言うことはどこにも書いていなくて、黄金、乳香、没薬の三つの捧げものをしたので3人だろうと言うことなのです。これらはもともと別々に書かれた出来事であり、もしかすると同じことを示しているのかもしれないし、全く違ったものかもしれません。

 さらに、マタイによる福音書では、イエス様の家族がエジプトに避難する話や、ヘロデ大王が2歳以下の男の子を皆殺しにする話が書かれています。これもマタイによる福音書にのみ書かれていることで、特殊な事なのです。

 私たちは、クリスマス物語を一連の物語として親しみすぎているために、これらが別々の話をつなぎ合わせたものであり、実はいろいろと解釈できるものであることを忘れてしまい、考えることすらしなくなっていました。クリスマス物語とは、ルカだけが語っている物語と、マタイだけが語っている物語をつなぎ合わせたものなのです。福音書が、共通して語っていることとは違うのです。今回、この学びを通して、もう一度原点に戻って、それぞれの福音書がどのようにイエス様の誕生の事を伝えようとしたのかを考えてみたいと思います。

さて、マタイによる福音書はイエス様が誕生した後の事をこのように語っています。1節2節です。

マタ 2:1 イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、

マタ 2:2 言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」

 イエス様がお生まれになったのはヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった、と書かれています。この事はルカもマタイも共通しています。ですが、マタイではどうしてベツレヘムで生まれたのかの説明はありません。ルカでは、皇帝アウグストゥスから住民登録の勅令が出て、その登録をするためにガリラヤのナザレからベツレヘムまで来たときに生まれたことが書いてあります。このベツレヘムで生まれたと言うことは重要なのです。なぜなら、救い主はベツレヘムから現れると言うことが予言されていたからです。このベツレヘムはダビデの出身地であり、ダビデの町とも呼ばれ、また以前にはエフラタとも呼ばれていました。ユダヤ人に対して書かれたマタイによる福音書では、救い主イエス・キリストが予言通り、ベツレヘムで生まれたと言うことを、歴史的事実として述べておく必要があったのです。

この時の王様はヘロデ王です。この王様は混乱していたユダヤの地方を最初に治めたヘロデ王で、その功績からヘロデ大王とも呼ばれています。この王様は、私たちは聖書からしか知らないので、残忍な悪い王様とのイメージを持ちがちですが、ユダヤに対してはとても大きな働きをした王様です。治める者もなく、盗賊が幅を利かせていた時代に、それらを壊滅し、治安を与え、エルサレムには神殿を立て、多くの町々や港を建設し、ローマとの良好な関係を結んで、ユダヤの国を大いに栄えさせた王様なのです。それで大王と呼ばれていました。それでも、ヘロデ大王の人気はいま一つでした。それはヘロデ王は純粋なユダヤ人ではなく、ユダヤ人とエドム人の間に生まれた人だからです。

聖書ではヘロデ王が残忍で猜疑心が強いところしか書いていませんが、ヨセフスと言う歴史家が書いたユダヤ古代史と言う本には、このヘロデ大王の事がくわしく書かれています。ヘロデ大王はとても気前のよい人で、人民のためにも多くの善政を行った人でもあるのです。ところが、家族関係ではとても悲惨なことになってしまいました。次の王権を狙う腹違いの子供たちが、ヘロデをだまして、相手の事を悪く言い、なんとか相手を滅ぼそうと企んだのです。ヘロデも何度もそのような目に合っている内に、不安になり、人を信じることが出来なくなり、最後には妻も、息子たちも次々に殺してしまうことになるのですが、それは単に残虐だからと言うよりも、そのような権力を狙う人々に囲まれて、踊らされた、悲惨な人生と言っていいのかもしれません。そのヨセフスのユダヤ古代史には、多くの戦争の物語はありますが、救い主が生まれて子供たちを殺した話は、書いていないのです。

このヘロデ王のところにやって来たのは、当方からやって来た占星術の学者たちです。この人たちは異常に明るい星を見たようです。そしてそのことが、救い主がユダヤに現れるしるしと受け止めたのです。実はこの時代にはそのようなうわさが、ユダヤだけではなく近隣のアラブ諸国にもにもあったと言うのです。そしてそのお生まれになった王様を拝みに来たのです。

転     

さて、救い主が現れた、と言う話を聞いた時に、三つの反応の仕方があります。はたして私たちはどれに属するでしょうか。一つは、この東方の博士たちや、羊飼いたちのように、それを喜び拝みに来る人々です。もう一つは、無関心で無反応な人々です。この人々はその救い主が現れたことに気がつきません。もう一つは、その救い主が現れたことに不安を抱き、排除しようとする人々です。ヘロデたちの反応はまさにこの不安を抱いた人々なのです。3節から6節です。

マタ 2:3 これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。

マタ 2:4 王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。

マタ 2:5 彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。

マタ 2:6 『ユダの地、ベツレヘムよ、/お前はユダの指導者たちの中で/決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、/わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」

 この東方の博士たちが、わざわざ遠い所から旅をして、ユダヤに生まれたと言う救い主である王様に会いに来て拝みに来たと言う話を聞いて、ヘロデ王は不安を抱きました。大王とさえ呼ばれるほどの権力者なのに恐れたのです。それはヘロデ王だけではなく、エルサレムの人々も皆、同様であったのです。私たちは救い主が、イエス様であり、どのような方であるかわかっているので、そのようなイエス様なら喜んで迎えたいと思います。ですが、この当時のメシアのイメージは裁きの神なのです。ですからこの世で優位に立っている人々は、皆自分の罪の事を思って、裁かれるのではないかと言う不安に駆られたのです。救われるより前に裁かれると言う恐怖に立ったのです。この世の秩序がひっくり返されて、神様の秩序に変えられるのではないか、それならば今まで通りのほうがいい、メシアなど来なくてもいい、と思ってしまうのです。私たちは、裁かれることを覚悟の上で、イエス様に委ねる覚悟がなければ、イエス様を受け入れることが出来ないのです。裁かれることを受け入れられない人は、イエス・キリストも受け入れられないのです。

不安になったヘロデ王がしたことは、祭司長たちや律法学者たちを集めて、メシアはどこに生まれることになっているかと尋ねました。彼らはベツレヘムですと答えました。そして旧約聖書を引用して、『ユダの地、ベツレヘムよ、/お前はユダの指導者たちの中で/決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、/わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』と書いてありますと説明したのです。これはミカ書5章2節の引用ですが、このように、救い主はベツレヘムで生まれると予言されていたのです。

そしてヘロデ王は、この東方の博士たちを呼び寄せて、見つかったら教えてくれ、私も拝みに行きたいからと言って、ベツレヘムに送り出したのです。ベツレヘムはエルサレムの南に10km行ったところですから、歩いてもすぐ行ける距離です。博士たちは、その不思議な星に導かれて、幼子のところまでやってきました。そこにその星が留まったのです。それを見て博士たちは喜びました。そしてその家に入ったのです。11節と12節です。

マタ 2:11 家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。

マタ 2:12 ところが、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った。

 博士たちは家の中に入りました。するとそこには母マリアと共に幼子がいました。ルカによる福音書によれば、そこは家と言うよりも馬小屋であり、幼子は飼い葉おけに寝かされていた、と言う表現になっています。ですがマタイでは、そこが馬小屋であるとは書いていません。日本人とユダヤ人の家畜に対する感覚は大分違うとイザヤペンダサンは言っています。日本人はそのような動物を畜生と呼んでさげすみますが、ユダヤ人はそのような家畜を自分の寝室にまで入れて可愛がって飼っていると言うのです。家畜の住居と自分たちの住居がはっきり分かれているわけではないのです。それは中東の方に行くと今でもそうです。家の中に自分たちの寝室があり、その隣は、鶏の部屋、その隣は羊の部屋などとなっているところは今だにあるのです。ですからイエス様が馬小屋で生まれたからと言って、それは悲惨な出生を物語っているものではないと言う感覚があって、それがユダヤ人には普通なのです。

そこで博士たちは、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげました。これは、黄金は、王様への贈り物を表し、乳香は祭司への贈り物を表し、没薬は死ぬことになっている人への贈り物なのです。これはイエス様の生涯を表す贈り物です。これらはどれも高価なものであったので、ある説によると、これらの贈り物のおかげで、ヨセフの家族はエジプトに逃れて生活することが出来たのだと言うことです。この博士たちは、夢で「ヘロデのところへ帰るな」とお告げがあったので、別の道を通って、帰って行ったと言うのです。占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言いました。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」ヨセフに天使がお告げになるのはこれで二回目です。最初はマリアが聖霊によって身ごもっていると言うお告げで、その次がこの、エジプトに逃げ、私が告げるまで、そこに留まっていなさい、と言うお告げです。このヨセフもまた、聖霊によって、導かれ、それに従った人なのです。そしてこの家族はエジプトに逃げました。もしかするとヨセフは、この博士たちから、ヘロデ王が危険な事を考えているかもしれないことを教えられたのかもしれません。ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、ヘロデが死ぬまでそこにいました。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった、と書かれています。当時はエジプトは、何かがあるとすぐに逃げていける場所であったのです。治安は安定し、食料も豊かだったので、困難を抱える多くのユダヤ人たちがエジプトに逃れてやって来ていたようです。そしてこの予言はホセア書11章1節の引用なのです。このように、マタイは旧約の予言をふんだんに引用して、イエス様が予言されたメシアである根拠を示しているのです。

 マタイが、ここで伝えようとしていることは、イエス様が、旧約聖書で予言された方であり、その通りベツレヘムでお生まれになり、エジプトから呼び戻された、神の子であると言うことです。そしてその出生は東方の占星学者たちにもその星の動きによって、認められ、確認された、神の子救い主であると言うことです。そのことは、自分たちが勝手に言っていることではなく、このような根拠の下で言っていることなのであると言うことなのです。そしてイエス様の命は、ヨセフが天使たちのお告げを信じて行動することによって救われてきたと言うことです。マリアが身ごもった時、ヨセフは天使のお告げを信じ、そして、生まれた時、エジプトに逃げるようにと言われたことを信じたのです。このようにイエス様は預言されて出生し、聖霊の導きによって守られて生き残ることが出来たのです。そして博士たちの贈り物によって、王であり、祭司であり、十字架の死と復活の主となる事を予言された人なのです。

 

(一分間黙想)(お祈り)

天の父なる神様。あなたはイエス様を予言通りにこの世にお遣わしになりました。そして天使の声を聴くヨセフの信仰によって守られてきました。この事を覚えて賛美いたします。この世に救い主が現れると、拝もうとする人と、殺そうとする人と、無視しようとする人がいます。どうか、裁かれることを恐れることなく、救い主を受け入れることが出来ますように。この世の事を喜ぶのではなくどうかあなたの御国を喜ぶものとなる事が出来ますように。いつも聖霊の声に耳を傾け導かれますように。

この祈りを、主イエス・キリストの御名によってお祈りいたします。 アーメン

 


<<聖書の箇所(新約聖書:マタイによる福音書)>>

◆占星術の学者たちが訪れる

マタ 2:1 イエスは、ヘロデ王の時代にユダヤのベツレヘムでお生まれになった。そのとき、占星術の学者たちが東の方からエルサレムに来て、

マタ 2:2 言った。「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです。」

マタ 2:3 これを聞いて、ヘロデ王は不安を抱いた。エルサレムの人々も皆、同様であった。

マタ 2:4 王は民の祭司長たちや律法学者たちを皆集めて、メシアはどこに生まれることになっているのかと問いただした。

マタ 2:5 彼らは言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者がこう書いています。

マタ 2:6 『ユダの地、ベツレヘムよ、/お前はユダの指導者たちの中で/決していちばん小さいものではない。お前から指導者が現れ、/わたしの民イスラエルの牧者となるからである。』」

マタ 2:7 そこで、ヘロデは占星術の学者たちをひそかに呼び寄せ、星の現れた時期を確かめた。

マタ 2:8 そして、「行って、その子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせてくれ。わたしも行って拝もう」と言ってベツレヘムへ送り出した。

マタ 2:9 彼らが王の言葉を聞いて出かけると、東方で見た星が先立って進み、ついに幼子のいる場所の上に止まった。

マタ 2:10 学者たちはその星を見て喜びにあふれた。

マタ 2:11 家に入ってみると、幼子は母マリアと共におられた。彼らはひれ伏して幼子を拝み、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げた。

マタ 2:12 ところが、「ヘロデのところへ帰るな」と夢でお告げがあったので、別の道を通って自分たちの国へ帰って行った。

◆エジプトに避難する

マタ 2:13 占星術の学者たちが帰って行くと、主の天使が夢でヨセフに現れて言った。「起きて、子供とその母親を連れて、エジプトに逃げ、わたしが告げるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが、この子を探し出して殺そうとしている。」

マタ 2:14 ヨセフは起きて、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトへ去り、

マタ 2:15 ヘロデが死ぬまでそこにいた。それは、「わたしは、エジプトからわたしの子を呼び出した」と、主が預言者を通して言われていたことが実現するためであった。