家庭礼拝 2023年10月11日 サムエル記下 14:1-33 ダビデアブサロムを許す

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起 

このダビデとアブサロムの確執の物語はいろいろな話が伏線として隠されており、読み解くのが難しくまた面白いところです。事の発端は長男のアムノンが、タマルに恋をして、策略を用いて辱め、そして捨ててしまったという悲劇から起こりました。アムノンは王位継承者で、アブサロムは3男です。アムノンの母はイズレエル人アヒノアムであり、アブサロムとタマルの母はゲシュルの王タルマイの娘マアカの子です。ダビデがサウル王に追われて荒れ野を逃げていた時、最初の妻となったのがこの長男の母イズレエル人アヒアノムでずっとダビデのもとにいた人です。その後ナバルの妻でアビガイルと言う聡明な妻が夫の愚かな過ちを謝り、貢物をもって許してもらい、その後ナバルが死んだので、ダビデの妻となりました。この人にも息子が出来、二男のキルアブですが、あまり目立った働きはありません。もしかすると死んだのかもしれません。この二人の妻が、ダビデの逃亡時代はいつもダビデと連れ添っていたのです。むしろ次の3男のアブサロムがこのダビデ王家の大きな問題を起こすのです。アブサロムの母は、ゲシュルの王タルマイの娘マアカの子なので、れっきとした王の血筋なのです。ですから、アブサロムは三男ではあるけれども、自分の方が王にふさわしいという権力意識が強かったかもしれません。それで王位継承者であるアムノンに密かな敵意を抱いていたかもしれません。そのような中で、アムノンが妹のタマルを辱めたので、この長男を殺そうとする思いが強くなっていったのだと思います。アブサロムはアムノンを殺した後は、ゲシュルの王アミフドの子タルマイのもとに逃げて3年間そこにとどまることになります。すなわち、母方の王のおじいさんに当たる人にかくまってもらったということになるのです。ですから、ダビデも強引に取り戻すことはできなかったのです。

このタマルとアムノンの話と言うのは、ダビデとウリヤの妻バトシェバの話と微妙に重なりあっているのです。ダビデがウリアヤの妻を自分の妻としたときには、長男のアムノンはすでに物心のついた少年か青年になっているはずです。ですから、王がそのようなことをするなら、自分も好きな人を奪っても良いのではないかと言うような思いがあったかもしれません。それも夫を殺してまでしたのですから、自分の方が罪がないと思っていたかもしれません。ダビデがいろいろな策略を用いてウリヤを殺してしまったように、アムノンも策略を用いてタマルを辱めたのです。アムノンがタマルを辱めたのが、純粋な恋心から来ているのかどうかも疑わしいのです。恋の悩みによって、病気になりそうだとは書かれていますが、タマルを辱めた後は、すぐに捨ててしまうからです。嫌われたからかもしれませんが、最初から辱めるために行ったのかもしれません。それは自分の王位継承を狙うアブサロムを貶めるためかもしれません。この様にこの物語にはいろいろ解釈する方法があるのです。いずれにしても、ダビデがウリヤの妻バトシェバを奪ってからは、あまりいいことが続きません。と言うのもそれからと言うものは神様の話が全然出てこないで、ただ人の思いだけの話になってくるのです。神様を抜きにして人の思いだけでするとどうなるかと言うことが良く分かります。

さて聖書に戻りますが、ダビデには意外と優柔不断なところがあります。人のことだとはっきり判断できるのに、自分のことだと何か良く分からない感じなのです。これは預言者ナタンが現れて、豊かな男と貧しい男のたとえ話をして、貧しい男の羊を取った豊かな男のことをダビデがさばいた時、ナタンはその男はあなただと言って、ダビデが自分のことを裁いていることに気づかせたのです。これと同じことが、今回は知恵ある女によって行われます。アブサロムがアムノンを殺したので、そのアブサロムを裁こうとしているダビデに対して、同じようにたとえ話で、自分を裁かせるのです。1節から11節です。

サム下 14:1 ツェルヤの子ヨアブは、王の心がアブサロムに向かっていることを悟り、

サム下 14:2 テコアに使いを送って一人の知恵のある女を呼び寄せ、彼女に言った。「喪を装ってほしい。喪服を着、化粧もせず、長い間死者のために喪に服しているように装うのだ。

サム下 14:3 そして王のもとに行き、こう語りなさい。」ヨアブは語るべき言葉を彼女に与えた。

サム下 14:4 テコアの女は王の前に出ると、地にひれ伏して礼をし、「王様、お救いください」と言った。

サム下 14:5 「どうしたのだ」と王が尋ねると、彼女は言った。「わたしは実はやもめでございます。夫は亡くなりました。

サム下 14:6 はしためには二人の息子がおりました。ところが二人は畑でいさかいを起こし、間に入って助けてくれる者もなく、一人がもう一人を打ち殺してしまいました。

サム下 14:7 その上、一族の者が皆、このはしためを責めて、『兄弟殺しを引き渡せ。殺した兄弟の命の償いに彼を殺し、跡継ぎも断とう』と申すのです。はしために残された火種を消し、夫の名も跡継ぎも地上に残させまいとしています。」

サム下 14:8 王は女に言った。「家に帰るがよい。お前のために命令を出そう。」

サム下 14:9 テコアの女は王に言った。「主君である王様、責めは、わたしとわたしの父の家にございます。王様も王座も責めを負ってはなりません。」

サム下 14:10 王は言った。「お前にあれこれ言う者がいたら、わたしのもとに連れて来なさい。その者がお前を煩わすことは二度とない。」

サム下 14:11 彼女は言った。「王様、どうかあなたの神、主に心をお留めください。血の復讐をする者が殺戮を繰り返すことのありませんように。彼らがわたしの息子を断ち滅ぼしてしまいませんように。」王は答えた。「主は生きておられる。お前の息子の髪の毛一本たりとも地に落ちることはない。」

この様に、ここでは預言者ナタンの代わりにヨアブが遣わす、知恵のある女が登場します。そして、ヨアブの考えたたとえ話をこの女を通して、ダビデに聞かせるのです。そしてダビデにその判断をさせるのです。

そのたとえ話とは、夫のいないこのやもめの女に二人の息子がいたが、いさかいを起こして一人を殺してしまったというのです。人を殺したものは死罪になるので、一族の者はかくまっていたこのやもめに、その人殺しを引き渡せ、殺してしまうからと言うのです。そうするとこのやもめは一度に二人の息子を失うことになり、後継ぎがいなくなります。どうか助けてくださいとダビデに救いを請うのです。

ダビデはこの状況を憐れんで、殺してはならないという命令を出すから家に帰るがよいと言いました。文句を言うものがいたら、私のもとに連れてきなさい。主が守ってくださると言ったのです。

この例えはダビデの二人の息子アムノンとアブサロムの事を言っており、アムノンを殺したアブサロムを引き渡せ、死刑にするからと世の中の人が言っていることを示しているのです。ダビデは周りの人の考えに影響されて、本当はアブサロムを許したいのだがそれが出来ないでいるのです。ところがこのやもめの女のたとえ話では、それは許してやれ、文句があるなら私のもとに連れてきなさい、主は生きておられる。と言って、許すことに決めることが出来るのです。

 このようなたとえ話でのダビデの判断を受けた後、このやもめの女はナタンのように、それではなぜ、と本題をアムノンとアブサロムの問題に切り替えていくのです。

サム下 14:12 女は言った。「主君である王様、はしためにもうひと言申し述べさせてください。」王は言った。「語るがよい。」

サム下 14:13 女は言った。「主君である王様、それではなぜ、神の民に対してあなたはこのようにふるまわれるのでしょう。王様御自身、追放された方を連れ戻そうとなさいません。王様の今回の御判断によるなら、王様は責められることになります。

サム下 14:14 わたしたちは皆、死ぬべきもの、地に流されれば、再び集めることのできない水のようなものでございます。神は、追放された者が神からも追放されたままになることをお望みになりません。そうならないように取り計らってくださいます。

サム下 14:15 王様のもとに参りまして、このようなことを申し上げますのは、民がわたしに恐怖を与えるからでございます。王様に申し上げれば、必ずはしための願いをかなえてくださると思いました。

サム下 14:16 王様は聞き届けてくださいました。神からいただいた嗣業の地からわたしと息子を断ち滅ぼそうとする者の手から、はしためを救ってくださいます。

サム下 14:17 はしためは、主君である王様のお言葉が慰めになると信じて参りました。主君である王様は、神の御使いのように善と悪を聞き分けられます。あなたの神、主がどうかあなたと共におられますように。」

この様にこのやもめの女は、「主君である王様、それではなぜ、神の民に対してあなたはこのようにふるまわれるのでしょう。王様御自身、追放された方を連れ戻そうとなさいません。王様の今回の御判断によるなら、王様は責められることになります。」と言いました。これは王様は周りの人のことを気にして、追放したアブサロムを連れ戻そうとしません。先ほどの例えの話では殺したもう一人を憐れんで許してあげることではありませんか。どうして周りの文句を言う人たちに文句があるなら私のもとに来なさいと言わないのですかと言うことを言っているのです。それをしないなら王様が責められるものとなりますと言ったのです。ですが王様は私の願いを聞き届けてくださったので、はしためを救ってくださいました。あなたの神、主があなたと共におられますようにと締めくくったのです。これはあなたの主と共にある判断が、あなたを救うことになりますよと言うことなのです。この話では二男のことは全く無視されているので、たぶん亡くなって、次の王位継承者は3男のアブサロムだろうと思います。この話ではこの二人の王位継承者を、殺すようなことはあってはいけないと言っているのです。

ダビデは自分の判断で、自分を裁いてしまったので、身動きが取れなくなりました。そしてこの話が罠であったことに気づいたのです。それはナタンの時と同じです。そしてこう言ったのです。18節から22節です。

サム下 14:18 王は女に言った。「わたしがこれから問うことに、隠し立てをしないように。」女は答えた。「王様、どうぞおっしゃってください。」

サム下 14:19 王は言った。「これはすべて、ヨアブの指図であろう。」女は答えて言った。「王様、あなたは生きておられます。何もかも王様の仰せのとおりでございます。右にも左にもそらすことはできません。王様の御家臣ヨアブがわたしにこれを命じ、申し上げるべき言葉をすべて、はしための口に授けたのでございます。

サム下 14:20 御家臣ヨアブが事態を変えるためにこのようなことをしたのです。王様は神の御使いの知恵のような知恵をお持ちで、地上に起こることをすべてご存じです。」

サム下 14:21 王はヨアブに言った。「よかろう、そうしよう。あの若者、アブサロムを連れ戻すがよい。」

サム下 14:22 ヨアブは地にひれ伏して礼をし、王に祝福の言葉を述べた。ヨアブは言った。「王よ、今日僕は、主君、王の御厚意にあずかっていると悟りました。僕の言葉を実行してくださるからです。」

この様に、この計略を考えたのが、ヨアブであろうとダビデは気が付きました。そのことをその女も白状しました。ダビデは、自分の本当の判断が、兄弟殺しを許してやり、遺産を相続させてやることだったので、ヨアブを叱ることはせず、その通りにしようと言い、アブサロムを連れ戻すがよいと言って、ヨアブに命令を出しました。ヨアブはダビデがヨアブの言葉を受け入れてくれたことに感謝し喜んだのです。

ヨアブはこの命令を実行しました。23節から28節です。

サム下 14:23 ヨアブは立ってゲシュルに向かい、アブサロムをエルサレムに連れ帰った。

サム下 14:24 だが、王は言った。「自分の家に向かわせよ。わたしの前に出てはならない。」アブサロムは自分の家に向かい、王の前には出なかった。

サム下 14:25 イスラエルの中でアブサロムほど、その美しさをたたえられた男はなかった。足の裏から頭のてっぺんまで、非のうちどころがなかった。

サム下 14:26 毎年の終わりに髪を刈ることにしていたが、それは髪が重くなりすぎるからで、刈り落とした毛は王の重りで二百シェケルもあった。

サム下 14:27 アブサロムには三人の息子と一人の娘が生まれた。娘はタマルという名で、大変美しかった。

サム下 14:28 アブサロムはエルサレムで二年間過ごしたが、王の前に出られなかった。

この様に、ヨアブはアブサロムを迎えに行って、エルサレムに連れてきました。アブサロムはヨアブに相当の恩義があるはずですが、そのことに対する感謝の言葉はありません。エルサレムに来たアブサロムは王の前には出ることが出来ませんでした。兄弟を殺したものが公然と許されることは良いことではないと判断したものと思われます。そうしないと今度は、アムノンの一族が騒ぎ出すかもしれないからです。ですから直接王の前に出ることなく、自分の家に帰らせるのがダビデにできる精一杯のことだったのです。そこでアムノンは王の前に出ることなく2年が過ぎました。

ここでアムノンがどのような人であるのかが書かれておりますが、とても美しい人で非の打ち所がなかったと言います。また3人の息子と一人の娘がいましたが、その名をタマルと言いました。これはあの辱められた妹と同じタマルと言う名で、どちらも大変美しかったのです。ここではその外見的な美しさだけが強調されており、心の中では、陰湿な欲望と思いとが渦巻いていたのです。

この様に、二年たっても王のもとに会いに行くことのできないアブサロムはいらだってきました。アブサロムはエルサレムに来た時、ダビデ王に許されて、次は自分が王位継承者になるのではないかと期待してきたのだと思います。ですがなかなかそのようには進まなかったのでいら立ってきたのです。そしてヨアブに使いを出しました。29節から33節です。

サム下 14:29 アブサロムは、ヨアブを王のもとへの使者に頼もうとして人をやったが、ヨアブは来ようとせず、二度目の使いにも来ようとしなかった。

サム下 14:30 アブサロムは部下に命じた。「見よ、ヨアブの地所はわたしの地所の隣で、そこに大麦の畑がある。行ってそこに火を放て。」アブサロムの部下はその地所に火を放った。

サム下 14:31 ヨアブは立ってアブサロムの家に来た。「あなたの部下がわたしの地所に火を放つとは何事です」と彼が言うと、

サム下 14:32 アブサロムはヨアブに言った。「わたしはお前に来てもらおうと使いをやった。お前を王のもとに送って、『何のためにわたしはゲシュルから帰って来たのでしょうか、これではゲシュルにいた方がよかったのです』と伝えてもらいたかったのだ。王に会いたい。わたしに罪があるなら、死刑にするがよい。」

サム下 14:33 ヨアブは王のもとに行って報告した。王はアブサロムを呼び寄せ、アブサロムは王の前に出て、ひれ伏して礼をした。王はアブサロムに口づけした。

この様に、焦りを感じたアブサロムは、ヨアブを呼んで王に使者として遣わそうとしたのですが、二度も無視されてしまいました。それでいらだったアブサロムは部下にヨアブの麦畑に火を放てと命じました。さすがにこれにはヨアブも怒って、アブサロムにどうして私の畑に火を放つのですかと文句を言いに来ました。すると、アブサロムはお前に来てもらおうと使いを出したが来てくれなかった。お前に王のところに行って、何のために私は帰ってきたのでしょうか、これならゲシェルにいたほうが良かったと伝えてほしかったのだと言いました。たぶんアブサロムはゲシェルにいれば王になれたのかもしれませんが、ダビデが連れ戻したので、エルサレムの王になれると思っていたのです。ですがなかなかそのようには進みませんでした。アブサロムは言いました。私は王に会いたいのだ、私に罪があるなら死刑にすればよいとさえ言ったのです。アブサロムは計略を用いて長男を殺したのに、何の反省もないどころか、私に何の罪があるのですか、あるなら死刑にすればいいとさえ居直っているのです。ダビデを説得して、アブサロムを連れ戻すことをダビデに勧めたヨアブに対しても感謝どころか、畑に火を放つようなことをするのです。これは自分だけが正しいと考える人の、傲慢な思いなのです。アブサロムが何のために私は帰って来たのかと言った時に、王位継承者として帰ってきたのではないのかと言う思いがあったのだと思います。これもまた傲慢な思いなのです。自分の状況を全く考えていないのです。

このアブサロムの言葉を聞いたヨアブは、それをダビデ王のもとに行って報告しました。するとやっと王はアブサロムを呼び寄せて、王の前に出ることが許されました。そしてひれ伏して礼をし、王はアブサロムに口づけをして、やっと形式的な対面が出来たのです。この様にダビデがアブサロムに譲歩して受け入れたのですが、アブサロムはそれに感謝するのではなく、心に陰謀と復讐を抱いていたのです。

アブサロムは、アムノンを殺したので母方のゲシェルの王のところに逃げ込みましたが、ダビデ王はアブサロムに心をかけていました。ですがそれを公に表わすことは控えていました。ですがそれを悟ったヨアブは、知恵のある女を使って、ダビデを説得したのです。それはたとえ話によって、ダビデに自分の立場を裁かせたのです。その結果、ダビデが考えていることは、反対者がいたとしても、ヨアブを許して連れ戻すという判断だったのです。そのことが分かったので、ダビデはアブサロムをエルサレムに連れ戻すことにしました。ですが直接会うことはまだはばかられたのです。2年たっても、王と会うことのできないアブサロムはだんだん苛立ちと反感を持つようになってきて、王に対してもヨアブに対しても憎しみを持つようになってしまったのです。さてどうなってしまうのでしょうか。

 

(一分間黙想)(お祈り)

天の父なる神様、アブサロムは妹思いの優しい兄であるとは限りませんでした。自分だけが正しいと思うとても傲慢な人でもありました。自分のしたことに反省をすることもなく、神様に悔い改めをすることもなく、いろいろ心を砕いてくれる人に感謝をささげるでもないのです。アブサロムはサウル以上に、神様から遠ざかってしまった人です。神様から離れた人がどうなるかは、サウルが大きな見本となりました。神様どうか私たちもこの事を学んで貴方から離れることなく、いつも御言葉を聞いて行うものとさせてください。それが最も確かな道であることを信じます。

この祈りを、主イエス・キリストの御名によって、お祈りいたします。アーメン

 

<<聖書の箇所(旧約聖書:◇サムエル記下)>>  

 

◆ダビデ、アブサロムを赦す

サム下 14:1 ツェルヤの子ヨアブは、王の心がアブサロムに向かっていることを悟り、

サム下 14:2 テコアに使いを送って一人の知恵のある女を呼び寄せ、彼女に言った。「喪を装ってほしい。喪服を着、化粧もせず、長い間死者のために喪に服しているように装うのだ。

サム下 14:3 そして王のもとに行き、こう語りなさい。」ヨアブは語るべき言葉を彼女に与えた。

サム下 14:4 テコアの女は王の前に出ると、地にひれ伏して礼をし、「王様、お救いください」と言った。

サム下 14:5 「どうしたのだ」と王が尋ねると、彼女は言った。「わたしは実はやもめでございます。夫は亡くなりました。

サム下 14:6 はしためには二人の息子がおりました。ところが二人は畑でいさかいを起こし、間に入って助けてくれる者もなく、一人がもう一人を打ち殺してしまいました。

サム下 14:7 その上、一族の者が皆、このはしためを責めて、『兄弟殺しを引き渡せ。殺した兄弟の命の償いに彼を殺し、跡継ぎも断とう』と申すのです。はしために残された火種を消し、夫の名も跡継ぎも地上に残させまいとしています。」

サム下 14:8 王は女に言った。「家に帰るがよい。お前のために命令を出そう。」

サム下 14:9 テコアの女は王に言った。「主君である王様、責めは、わたしとわたしの父の家にございます。王様も王座も責めを負ってはなりません。」

サム下 14:10 王は言った。「お前にあれこれ言う者がいたら、わたしのもとに連れて来なさい。その者がお前を煩わすことは二度とない。」

サム下 14:11 彼女は言った。「王様、どうかあなたの神、主に心をお留めください。血の復讐をする者が殺戮を繰り返すことのありませんように。彼らがわたしの息子を断ち滅ぼしてしまいませんように。」王は答えた。「主は生きておられる。お前の息子の髪の毛一本たりとも地に落ちることはない。」

サム下 14:12 女は言った。「主君である王様、はしためにもうひと言申し述べさせてください。」王は言った。「語るがよい。」

サム下 14:13 女は言った。「主君である王様、それではなぜ、神の民に対してあなたはこのようにふるまわれるのでしょう。王様御自身、追放された方を連れ戻そうとなさいません。王様の今回の御判断によるなら、王様は責められることになります。

サム下 14:14 わたしたちは皆、死ぬべきもの、地に流されれば、再び集めることのできない水のようなものでございます。神は、追放された者が神からも追放されたままになることをお望みになりません。そうならないように取り計らってくださいます。

サム下 14:15 王様のもとに参りまして、このようなことを申し上げますのは、民がわたしに恐怖を与えるからでございます。王様に申し上げれば、必ずはしための願いをかなえてくださると思いました。

サム下 14:16 王様は聞き届けてくださいました。神からいただいた嗣業の地からわたしと息子を断ち滅ぼそうとする者の手から、はしためを救ってくださいます。

サム下 14:17 はしためは、主君である王様のお言葉が慰めになると信じて参りました。主君である王様は、神の御使いのように善と悪を聞き分けられます。あなたの神、主がどうかあなたと共におられますように。」

サム下 14:18 王は女に言った。「わたしがこれから問うことに、隠し立てをしないように。」女は答えた。「王様、どうぞおっしゃってください。」

サム下 14:19 王は言った。「これはすべて、ヨアブの指図であろう。」女は答えて言った。「王様、あなたは生きておられます。何もかも王様の仰せのとおりでございます。右にも左にもそらすことはできません。王様の御家臣ヨアブがわたしにこれを命じ、申し上げるべき言葉をすべて、はしための口に授けたのでございます。

サム下 14:20 御家臣ヨアブが事態を変えるためにこのようなことをしたのです。王様は神の御使いの知恵のような知恵をお持ちで、地上に起こることをすべてご存じです。」

サム下 14:21 王はヨアブに言った。「よかろう、そうしよう。あの若者、アブサロムを連れ戻すがよい。」

サム下 14:22 ヨアブは地にひれ伏して礼をし、王に祝福の言葉を述べた。ヨアブは言った。「王よ、今日僕は、主君、王の御厚意にあずかっていると悟りました。僕の言葉を実行してくださるからです。」

サム下 14:23 ヨアブは立ってゲシュルに向かい、アブサロムをエルサレムに連れ帰った。

サム下 14:24 だが、王は言った。「自分の家に向かわせよ。わたしの前に出てはならない。」アブサロムは自分の家に向かい、王の前には出なかった。

サム下 14:25 イスラエルの中でアブサロムほど、その美しさをたたえられた男はなかった。足の裏から頭のてっぺんまで、非のうちどころがなかった。

サム下 14:26 毎年の終わりに髪を刈ることにしていたが、それは髪が重くなりすぎるからで、刈り落とした毛は王の重りで二百シェケルもあった。

サム下 14:27 アブサロムには三人の息子と一人の娘が生まれた。娘はタマルという名で、大変美しかった。

サム下 14:28 アブサロムはエルサレムで二年間過ごしたが、王の前に出られなかった。

サム下 14:29 アブサロムは、ヨアブを王のもとへの使者に頼もうとして人をやったが、ヨアブは来ようとせず、二度目の使いにも来ようとしなかった。

サム下 14:30 アブサロムは部下に命じた。「見よ、ヨアブの地所はわたしの地所の隣で、そこに大麦の畑がある。行ってそこに火を放て。」アブサロムの部下はその地所に火を放った。

サム下 14:31 ヨアブは立ってアブサロムの家に来た。「あなたの部下がわたしの地所に火を放つとは何事です」と彼が言うと、

サム下 14:32 アブサロムはヨアブに言った。「わたしはお前に来てもらおうと使いをやった。お前を王のもとに送って、『何のためにわたしはゲシュルから帰って来たのでしょうか、これではゲシュルにいた方がよかったのです』と伝えてもらいたかったのだ。王に会いたい。わたしに罪があるなら、死刑にするがよい。」

サム下 14:33 ヨアブは王のもとに行って報告した。王はアブサロムを呼び寄せ、アブサロムは王の前に出て、ひれ伏して礼をした。王はアブサロムに口づけした。