家庭礼拝 2020年4月15日 創世記 25:1-17 アブラハムの子孫と死

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 今日の個所で、アブラハム物語は終わりとなります。これからはイサクの話になるかと思いきや、ほとんど新しいことはなく、エサウとヤコブが生まれると、次はヤコブ物語に移るのです。イサク物語と言える章は26章にあるのですが、ここだけです。しかもその内容はほとんどアブラハム物語に出てきた話と同じです。イサクが妻のリベカのことを妹だと偽って、アビメレクから非難されることや、井戸のことで、ペリシテ人たちといざこざが起こり、アビメレクと契約して、ベエルシェバと言う名前が生まれたことなどはほとんど同じですが、むしろこちらの方が詳しいくらいで、二つ合わせて理解した方がよさそうです。むしろイサクよりもリベカの方が存在感があり、それがヤコブ物語へとつながっていくのです。どうしてイサクがこんなにも存在感がないのかが不思議なくらいです。年老いてから生まれたからなのでしょうか。

 今日の聖書の個所には三つの小見出しがあります。一つ目は「ケトラによるアブラハムの子孫」と言うことです。アブラハムはサラが死んでから、また正妻をもらったようです。こちらの方には子供がたくさんできるのですが、アブラハムの遺産も祝福も受け継ぐのはイサクだけのようです。二つ目は「アブラハムの死と埋葬」と言うことで、アブラハムが天寿を全うして、死んで、サラと同じ墓に入ったことが語られています。三つめは、「イシュマエルの子孫」です。ケトラは正妻のようですが、その子供たちには何の遺産もなく祝福もありません。それどころかイサクから遠ざけられたところに移住して住むことになります。もう一方の側女ハガルの子のイシュマエルの方が、神様から祝福され、そこから、イサクの子孫と同じように12部族が生まれて、アラビア地方を支配するものとなるのです。

このようにして、アブラハム物語はその死と埋葬の話と子孫がどうであったかという記述で、終わるのです。

 この25章にはこの後、「エサウとヤコブの誕生」と言うことでいよいよヤコブ物語が始まるのですが、その次の「長子の特権」と言うところでは兄弟の争いが始まっているのです。ですからこの25章は本当はこのエサウとヤコブの誕生のところから新しい章に入るべきなのだと思います。

それでは本題に入りましょう。1節から4節です。

創 25:1 アブラハムは、再び妻をめとった。その名はケトラといった。

創 25:2 彼女は、アブラハムとの間にジムラン、ヨクシャン、メダン、ミディアン、イシュバク、シュアを産んだ。

創 25:3 ヨクシャンにはシェバとデダンが生まれた。デダンの子孫は、アシュル人、レトシム人、レウミム人であった。

創 25:4 ミディアンの子孫は、エファ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダアであった。これらは皆、ケトラの子孫であった。

 アブラハムは再婚するのですが、何歳の時でしょうか。先妻のサラがなくなったのが127歳の時であり、その時アブラハムは137歳でしたから、140歳近くで再婚したのだと思います。そしてアブラハムが亡くなるのは175歳ですから、140歳から150歳くらいの間に、ケトラとの間に6人の子供を作ったということになります。こちらの方は、イサクや、イシュマエルが生まれるときのような待ち望んで生まれたというよりは、勝手に生まれてきたという感じで、その子孫のこともほとんど書かれていません。しかも6人の子供から孫が生まれたのはヨクシャンとミディアンだけであり、ほかの子供は結婚もしていないのかもしれません。アブラハムの直系のイサクの子孫はカナン地方に住み、

イシュマエルやケトラの子孫はもっと南のアラビア地方に住むようになります。特にイシュマエルの子孫はシナイ半島付近に住み、ケトラの子孫はさらに南のアラビア半島に住むようになります。ケトラの子孫の中で有名になるのはミディアン人であるとかシェバ人であるとかかしばしば聖書に出てくる名前なので、これはケトラの子孫であると覚えておいた方がいいです。特にミディアンはモーセがエジプトで人を殺して、逃げ込んだところがこのミディアンの地で、ここでしばらく隠れていて妻をめとったのです。

さてアブラハムには子供がこのようにたくさん出来たのですが、イサクは特別だったのです。アブラハムはどうしたでしょうか。5節と6節です。

創 25:5 アブラハムは、全財産をイサクに譲った。

創 25:6 側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に、東の方、ケデム地方へ移住させ、息子イサクから遠ざけた。

 アブラハムは全財産をイサクに譲ったのです。イサクがリベカを嫁に迎い入れるときにはすでにこの財産をすべて譲り受けていたので、その前にほかの子供たちを遠ざけたようです。ここにはケトラは正妻ではなくて、側女として表現されており、側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に、東の方、ケデム地方へ移住させ、息子イサクから遠ざけた、と書かれています。ですから正妻の子としてはイサクだけが認められ、神様から祝福された子孫とされたのです。そしてケデムと言う地方はよくわからないですが、その子孫が住み着いたのは東と言うよりも南東地方のアラビア半島なのです。アブラハムは自分が生きている間にこのように、イシュマエルの子孫も、ケトラの子孫もイサクから遠ざけ、イサクを守ったのです。そうでないとイサクを殺してその遺産を乗っ取ろうとするものが出てくるからです。たぶんアブラハムはこのような準備を整えてから、イサクに嫁を貰おうと決心したのだと思います。

 このようにしてアブラハムは天寿を全うしました。7節と8節です。

創 25:7 アブラハムの生涯は百七十五年であった。

創 25:8 アブラハムは長寿を全うして息を引き取り、満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。

アブラハムが死んだとき、年は175歳でした。これは長生きした方です。アブラハムは長寿を全うして息を引き取り満ち足りて死んだとあります。アブラハムにはもうこの世に思い残すことなく安心して、幸せに死ぬことができました。子どもたちの間に争いもなく、自分の子孫がイサクを通して、海の砂のように、天の星のように増えることを信じることができたからでした。そしてアブラハムは先祖の列に加えられたとありますが、これは先祖としてあがめられるようになったということだと思います。すなわち、まっとうな死を迎えて、葬られたということです。先祖の列に加えられない人と言うのは、その家計に恥を残すような人は先祖の列に加えられないのです。

 次にアブラハムがどこに葬られたかが書かれていますが、驚くべきことに、その葬儀にはハガルの子イシュマエルも一緒に出席しているのです。ずいぶん遠くに住んでいたのですが、アブラハムの葬儀には駆けつけてきたのです。9節から11節です。

創 25:9 息子イサクとイシュマエルは、マクペラの洞穴に彼を葬った。その洞穴はマムレの前の、ヘト人ツォハルの子エフロンの畑の中にあったが、

創 25:10 その畑は、アブラハムがヘトの人々から買い取ったものである。そこに、アブラハムは妻サラと共に葬られた。

創 25:11 アブラハムが死んだ後、神は息子のイサクを祝福された。イサクは、ベエル・ラハイ・ロイの近くに住んだ。

 アブラハムは自分の土地を持たない人でしたが、サラが死んだときにその墓地として、ヘト人ツォハルから買い取った土地がありました。そこにはマクペラの洞穴と言うのがあって、そこがサラの墓でした。その場所にアブラハムも葬られたのです。アブラハムはこの土地の有力者でもありましたから、きっとその葬儀は土地の人たちも集まって盛大に行われたと思います。そしてアブラハムの子孫たちもたくさん出席したと思います。その中で、息子イサクとイシュマエルは特別で、喪主的な役割を果たしたのだと思います。イサクとイシュマエルには争いもなく、平和であったのです。

 アブラハムが死んだ後、神様は息子のイサクを祝福された、とあります。この時、イサクは、ベエル・ラハイ・ロイの近くに住んでいました。イサクがリベカと結婚したころはネゲブ地方に住んでいて、リベカと出会った時にはこのベエル・ラハイ・ロイから帰ってきたときでした。この場所はイシュマエルの母親ハガルが、正妻サラに嫉妬されて、アブラハムの元を出て、このベエル・ラハイ・ロイの井戸のところで、苦しみ悩んでいた時、主の御使いと出会って、アブラハムのもとに帰ったという因縁のある井戸なのです。アブラハムが死んだときにはイサクはこのベエル・ラハイ・ロイに住んでいたのです。いろいろな歴史のつながりがあるものです。

 さて、アブラハム物語の最後の話はイシュマエルの子孫の話です。12節から16節です。

創 25:12 サラの女奴隷であったエジプト人ハガルが、アブラハムとの間に産んだ息子イシュマエルの系図は次のとおりである。

創 25:13 イシュマエルの息子たちの名前は、生まれた順に挙げれば、長男がネバヨト、次はケダル、アドベエル、ミブサム、

創 25:14 ミシュマ、ドマ、マサ、

創 25:15 ハダド、テマ、エトル、ナフィシュ、ケデマである。

創 25:16 以上がイシュマエルの息子たちで、村落や宿営地に従って付けられた名前である。彼らはそれぞれの部族の十二人の首長であった。

 アブラハムにとっての長男はイシュマエルでした。ですがその母親はサラの女奴隷でありエジプト人でした。イシュマエルはアブラハムの初めての子供であり、長男です。サラも自分には子供が産めないとあきらめて、その女奴隷ハガルに産ませたアブラハムの子です。ですからみんなでその子を喜び育てたはずです。ところがサラに、子供ができると、サラはイシュマエルを厭うようになり、ついにはアブラハムの元から追い出してしまいます。ハガルは追い出されてベエルシェバまで来ると、もう生きる気力がなくなり、子供が死にそうになっているのに忍びなく、声をあげて泣いていました。そこに神様が現れ、その子イシュマエルにも祝福を与えると約束したのです。そしてハガルは目が開かれて、井戸を見つけたのです。そのあとイシュマエルは無事に成長し、ハガルはイシュマエルのために、エジプト人の妻を与えたのです。そして、イシュマエルは神様の約束通り祝福されて、12人の子供を与えられたのです。その子供たちは成長し、それぞれ部族の12人の首長となったのです。彼らは、シナイ半島からアラビア半島の北側に生活する砂漠の民とも呼ばれる、ベドウィン族の祖先となったのです。そして彼らはアラビア人の祖先であり、マホメットの先祖なのです。ですからイスラム教ではイサクよりもこのイシュマエルを尊び、サラよりもハガルの方をマリア様をあがめるようにあがめているのです。

 そしてこのイシュマエルも祝福され、天寿を全うして死にます。17節と18節です。

創 25:17 イシュマエルの生涯は百三十七年であった。彼は息を引き取り、死んで先祖の列に加えられた。

創 25:18 イシュマエルの子孫は、エジプトに近いシュルに接したハビラからアシュル方面に向かう道筋に沿って宿営し、互いに敵対しつつ生活していた。

 イシュマエルは137歳で死にました。彼もまた先祖の列に加えられてあがめられました。ちなみにイサクは何歳まで生きたかと言うと35章の28節に書かれていますが、180歳まで生きました。イサクもまた高齢のうちに満ち足りて死んだと書かれています。アブラハムよりもちょっと長生きしました。イシュマエルの子孫たちは、エジプトのすぐ隣のシュルに接したハビラから、アシュルと言う町に向かう砂漠を超える街道筋に沿って、住んでいたのです。イシュマエルの子孫の部族は荒々しく戦闘的で、互いに敵対しつつ生活していたということです。

このようにしてアブラハムの生涯は終わりました。ですが、神様の祝福通り、子孫が与えられ、その繁栄を信じつつ、アブラハムは満たされて死んでいくことができ、先に亡くなったサラと共にその墓に入ることができたのです。アブラハムは真に主に祝福された人でした。ですから、アブラハムのことを信仰の父と呼ぶことがあるのです。何よりも神様を信じて生きてきたからです。そのあとユダヤ教もイスラム教もキリスト教もそれぞれ違った立場から、このアブラハムを信仰の父と仰いで、賛美しているのです。

 

(一分間黙想)(お祈り)

天の父なる神様、アブラハムは祝福されて天寿を全うしました。多くの子供たちがいましたが、最後はイサクとイシュマエルに見送られながら、平和の内にサラの墓に入ることができました。多くの人々がアブラハムを見て、この人は神の人だと認めました。それほどアブラハムには神様の栄光が宿っていました。それは自分のことではなくいつも神様のことを第一に考え信じていたからでした。私たちもアブラハムの子孫として、そしてキリストによって生まれ変わったものとして信仰によって生かされるものでありますように、お祈りいたします。

この祈りを、主イエス・キリストの御名によってお祈りいたします。アーメン


<<聖書の箇所(旧約聖書:◇創世記)>>  

◆ケトラによるアブラハムの子孫

創 25:1 アブラハムは、再び妻をめとった。その名はケトラといった。

創 25:2 彼女は、アブラハムとの間にジムラン、ヨクシャン、メダン、ミディアン、イシュバク、シュアを産んだ。

創 25:3 ヨクシャンにはシェバとデダンが生まれた。デダンの子孫は、アシュル人、レトシム人、レウミム人であった。

創 25:4 ミディアンの子孫は、エファ、エフェル、ハノク、アビダ、エルダアであった。これらは皆、ケトラの子孫であった。

創 25:5 アブラハムは、全財産をイサクに譲った。

創 25:6 側女の子供たちには贈り物を与え、自分が生きている間に、東の方、ケデム地方へ移住させ、息子イサクから遠ざけた。

◆アブラハムの死と埋葬

創 25:7 アブラハムの生涯は百七十五年であった。

創 25:8 アブラハムは長寿を全うして息を引き取り、満ち足りて死に、先祖の列に加えられた。

創 25:9 息子イサクとイシュマエルは、マクペラの洞穴に彼を葬った。その洞穴はマムレの前の、ヘト人ツォハルの子エフロンの畑の中にあったが、

創 25:10 その畑は、アブラハムがヘトの人々から買い取ったものである。そこに、アブラハムは妻サラと共に葬られた。

創 25:11 アブラハムが死んだ後、神は息子のイサクを祝福された。イサクは、ベエル・ラハイ・ロイの近くに住んだ。

◆イシュマエルの子孫

創 25:12 サラの女奴隷であったエジプト人ハガルが、アブラハムとの間に産んだ息子イシュマエルの系図は次のとおりである。

創 25:13 イシュマエルの息子たちの名前は、生まれた順に挙げれば、長男がネバヨト、次はケダル、アドベエル、ミブサム、

創 25:14 ミシュマ、ドマ、マサ、

創 25:15 ハダド、テマ、エトル、ナフィシュ、ケデマである。

創 25:16 以上がイシュマエルの息子たちで、村落や宿営地に従って付けられた名前である。彼らはそれぞれの部族の十二人の首長であった。

創 25:17 イシュマエルの生涯は百三十七年であった。彼は息を引き取り、死んで先祖の列に加えられた。

創 25:18 イシュマエルの子孫は、エジプトに近いシュルに接したハビラからアシュル方面に向かう道筋に沿って宿営し、互いに敵対しつつ生活していた。